Biography

2014年。
世界は音楽で満たされていた。
恋愛も家族愛も、将来への不安も、鬱屈した社会への不満すら、人々は音楽に救済を求め、
そこに幸福と興奮、そして安らぎを見つけ出す。
人間の暮らしに、なくてはならないものとなったのだ。
NO MUSIC, NO LIFE.
音楽なくして、人生なし。
そんな謳い文句さえ、堂々と宣言される時代。

しかし他方で、音楽が氾濫し、供給過多に陥っていたのもまた事実である。
人に感動を与える芸術というよりも、利益をもたらす製造物として、音楽が消耗品のように生産され、
消費されていく。
技術の進歩に伴って音楽制作の効率化と簡略化が進み、誰もが等し並に労せずして曲を生み出し、
発信できるようになったことも追い風となった。
下手な鍛冶屋も一度は名剣。実績や人脈のない素人でも、一攫千金を狙える夢の時代が訪れたのだ。
音楽業界が殷賑を極めた代償として、社会が必要とする量をはるかに上回る益体もない音楽が跋扈するようになった。
そして、 一度も人々の耳に触れる機会を与えられぬまま葬られる音楽の量も増えていった。

我々には聞こえたのだ。
大きな期待を背負って生を受けたはずなのに、世に放たれることなく埋葬された音楽たちの、怨嗟の声が。
打ち捨てられ、生産者にすら忘れられた彼らを墓の中から掘り起こし、あらためてその魅力と価値を世に問うことこそ、我々に与えられた使命にほかならなかった。
五人の死神達は、かつて憫然たる末路を辿った音楽に、熟達の技で新たな生命を吹き込み、蘇らせるだろう。
臥薪嘗胆の末にようやく陽の目を見たその音が、あなたの中に眠っていた狂熱を呼び覚ますことを我々は確信している。

歌墓場へようこそーーーー。